東京電力エナジーパートナーの高圧電力の標準メニューは3種類の「全く異なる」料金体系に細分化されています。プランによって電気代高騰リスクが極めて大きいため、注意点を中心にベーシックプラン/市場調整ゼロ/市場価格連動の3プランを比較します。
ベーシックプラン/市場調整ゼロ/市場価格連動の違い
3プランは何が異なるのか、分かりやすく解説します。
毎月変動する料金部分の「計算方法」が異なる
ベーシックプラン/市場調整ゼロ/市場価格連動の3プランで最も大きく異なるのが、毎月変動する調整単価の部分です。調整単価の計算方法が大きく異なるため、タイミングによっては電気代に2倍以上の差が生じる場合もあります。
3プランの違いを表にまとめます。
市場調整ゼロ | ベーシック | 市場価格連動 | |
---|---|---|---|
データ参照先 | 財務省貿易統計 燃料価格 | 財務省貿易統計 燃料価格 卸電力市場 電力取引価格 | – 卸電力市場 電力取引価格 |
価格変動幅 | 小 | 中 | 大 |
平時の電気代 | 高 | 中 | 安 |
取引価格高騰時 電気代 | 安 | 高 | かなり高 |
市場調整ゼロプランは、東京電力の家庭向けの一般的な料金メニューと同様に、燃料価格の変動に応じて毎月変動する燃料費調整制度を採用しています。概ね家庭向けプランに伴った価格連動をする料金プランです。
それに対しベーシックプランと市場価格連動プランは「市場連動型プラン」に分類されます。市場連動型プランでは、日本卸電力取引所における電力取引価格に連動して、毎月の調整単価が変動します。ベーシックプランでは市場連動と燃料価格連動を組み合わせて使用、市場価格連動プランでは燃料価格連動はなく電力取引価格に伴って変動します。
市場連動型のメリットとリスク
高圧電力では2021年頃から拡大しつつある市場連動型プランですがメリットもある反面、絶対に見落としてはいけないリスクもあります。メリット・デメリット両面から解説します。
「平時」は電気代が安い
市場連動型プラン、特に市場連動度合いの強い料金メニュー(東電では「市場価格連動型」)は燃料費調整型の料金メニューと比較して、平時は電気代が安い傾向があります。
東電を含め、電力会社(小売)は卸電力市場から電気を仕入れて顧客に電気を販売しています。仕入れコストが電力取引価格に伴って変動する収益構造です。一方、従来の燃料費調整型の料金メニューでは販売価格は電力取引価格と連動していません。このギャップを埋めるため、燃料費調整型の料金メニューでは電力先物取引を活用したり、市場ではなく相対契約での調達を厚くするなどして対応しています。
いわば市場連動度合いの強い料金メニューは、このような「保険」を掛けていない分、保険料が掛からず平時は安いというわけです。燃料費調整型は保険料が上乗せされている分、平時は高くなりがちです。
余談ですが、2021年1月に電力取引価格の異常な高騰が発生しました。通常1kWhあたり12円程度の取引価格が、月間平均で66.53円まで高騰しました。当時は多くの契約が燃料費調整型であったため、電力取引価格の高騰を顧客に転嫁することが出来ず、当時業界最大手だったF-Power社を始め少なくない新電力が経営破綻や事業撤退・縮小に追い込まれています。

電力取引価格高騰時に電気代が高騰する
平時は電気代が安い市場連動型プランですが、電力取引価格の高騰が発生した際に電気代が高額になる場合があります。電力取引価格が過去最高を記録した2021年1月を例に、簡易的に試算します。
電力取引価格 66.53円/kWh | |
---|---|
市場調整ゼロプラン | (市場価格調整単価無し) |
ベーシックプラン 市場価格調整単価 | 13.84円/kWh 別途、燃料費調整単価 |
市場価格連動型プラン 市場価格調整単価 | 61.54円/kWh |
電力取引価格の過去最高値の場合の、東京電力エナジーパートナーの高圧電力の市場価格調整単価の概算値です。
平時の市場価格調整単価は0円/kWh前後です(直近の実績を元に水準が決定されている) 電力取引価格が過去最高まで高騰した際にはベーシックプランで約13円/kWh、市場価格連動型プランでは約61円/kWh、電気代が上昇することになります。
例えば月10万kWhを使用する需要家では、ベーシックプランで1ヶ月の電気代が130万円、市場価格連動型プランでは610万円も上昇することになります。電気代が1ヶ月で600万円も上昇することで、経営に重大な支障をきたすリスクも想定した上で検討する必要があります。
例として電力取引価格が過去最高まで上昇した2021年1月の取引価格値を引用しましたが、電力取引価格が過去最高を更新する可能性も否定できません。月間平均で100円/kWh以上まで高騰するリスクも存在しています。
なお、2021年1月の電力取引価格高騰は新型コロナの影響で海外の港でのLNG(液化天然ガス)の積み出し作業が滞り、日本全体で燃料不足が発生したことで発電量が減少し、需給が引き締まったことで生じたものです。新型コロナという世界的な異常事態が生み出した特殊な要因とも言えます。直前の2020年夏は電力取引価格が過去最安水準で推移していましたが、これも新型コロナの感染拡大により燃料価格の下落や国内経済の停滞が生じたことが原因でした。
結論:どのメニューを選ぶべきか
最も市場連動度合いが強い「市場価格連動型」は電力取引価格高騰時のリスクが高いため、推奨しません。したがって「ベーシックプラン」と「市場調整ゼロプラン」を、平時の電気代水準と電力取引価格高騰時のリスクを考慮して比較検討することを推奨します。
なお、東京電力以外の電力会社に乗り換えることで電気代の削減が実現できる場合があります。一括見積もりサービスを利用することで複数の電力会社から相見積もりを取り寄せることができます。東電以外の電力会社を選ぶ際も、市場連動度合いが高いものは推奨しません。以下から一括見積もりを取り寄せることができます。