電気料金の高騰が続く中、「タダ電」という少し変わった電気プランが注目を集めています。
名前の通り、月5,000円までの電気代が無料になるという仕組みですが、使い方を間違えると大手電力よりも高くつくこともあります。
ここでは、電力自由化の専門家の視点から、このプランの特徴と注意点をわかりやすく整理します。
タダ電はどんなサービスか
運営しているのは東京都港区に本社を置く「エスエナジー株式会社」です。
同社は2020年に設立され、2023年5月から「タダ電」を提供しています。
料金の仕組みを簡単に説明
タダ電の最大の特徴は、月5,000円分の電力量料金まで無料になることです。
ただし、無料枠を超えると複数の料金が一気に発生します。
- 電力量料金:70円/kWh(約71kWhまで無料)
- 5,000円を超えると課金される項目
・基本料金:280円
・燃料費調整額:超過分から課金
・再エネ賦課金:超過分から課金
たとえば月の使用量が71kWhであれば無料ですが、72kWhを使うと約356円の請求になります(2025年10月の燃料費調整単価を基準)。
一人暮らしに向く理由
タダ電は、電気をあまり使わない世帯に適しています。
特にワンルームや1Kの一人暮らしで在宅時間が短い人なら、電気代を抑えられる可能性があります。
以下は東京電力エリア(20A契約、2025年10月時点)の比較です。
| 使用量 | 東京電力 従量電灯B | タダ電 |
|---|---|---|
| 月71kWh | 2478円 | 0円 |
| 月100kWh | 3236円 | 2499円 |
| 月170kWh | 5395円 | 7856円 |
平均的な一人暮らし(170kWh)ではタダ電の方が割高ですが、使用量が115kWh以下なら有利になります。
在宅時間が短い社会人や学生には検討の余地があります。
地域別の目安(ボーダーライン)
次の表は、タダ電が大手電力よりも安くなる目安です。
この使用量を超えるとタダ電は割高になります。
| エリア | ボーダー(月あたり) |
|---|---|
| 北海道電力 | 140kWh |
| 東北電力 | 115kWh |
| 東京電力 | 115kWh |
| 中部電力 | 115kWh |
| 北陸電力 | 115kWh |
| 関西電力 | 115kWh |
| 中国電力 | 115kWh |
| 四国電力 | 115kWh |
| 九州電力 | 110kWh |
電気使用量は季節によって変動します。
冷暖房を使う月だけボーダーを少し上回る程度なら問題ありませんが、年間を通じて超える場合は別のプランを検討した方が安心です。
契約・解約のハードルが低い
タダ電には初期費用や解約違約金がありません。
試しに契約してみて、合わなければすぐに切り替えることができます。
電気料金プランを比較検討している人にとっては、この柔軟さは大きなメリットです。
市場連動型プランではない安心感
最近増えている「市場連動型プラン」は、電力取引価格の変動に連動して料金が上下する仕組みです。
価格が高騰すると電気代も跳ね上がるリスクがあります。
タダ電はこの方式を採用しておらず、従来型の燃料費調整方式を採用しています。
相場の急変に左右されにくい点は安心材料です。
ただし、将来的に料金体系が変更される可能性もあるため、契約約款は定期的に確認しておきましょう。
タダ電のデメリットも押さえておく
- 無料枠を超えると料金単価が高い
大手電力の約1.5~2倍になるため、使い過ぎると逆に割高になります。 - ファミリー世帯には不向き
使用量が多い家庭では大手電力の方が安くなる場合がほとんどです。 - 料金改定のリスクがある
他の新電力と同様、料金体系が変わる可能性があります。契約条件の控えを取っておくと安心です。
まとめ:節電上手な一人暮らし向けプラン
タダ電は、電気の使用量が少ない人にこそ向いているプランです。
月5,000円以内に収まる生活なら、電気代をほぼゼロに抑えられます。
一方で、使用量が多い人やファミリー世帯には不向きです。
自分の使用状況をよく確認し、無料枠を有効に使えるかを判断して選びましょう。
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